民泊を3階建以上の戸建で運営する際には、通常の2階建以下とは異なる法的・安全面のルールがあります。
その中でも特に重要なのが「竪穴区画(たてあなくかく)」の設置です。これは火災時に煙や火が階をまたいで広がらないようにするための重要な防火構造です。
本記事では、3階建以上の戸建を民泊として活用する際に必要な法令、竪穴区画の設置基準、そして申請の流れまでを詳しく解説します。
民泊で3階建以上の戸建を運営する際の注意点

3階建以上の戸建で民泊を運営するには、2階建以下の物件とは異なる多くの法的・実務的な注意点があります。
旅館業法や住宅宿泊事業法の許可・届出が必要
民泊を行う際には、まず旅館業法または住宅宿泊事業法に基づく許可や届出が必要です。旅館業法では営業許可が必要となり、用途変更や構造変更も求められる場合があります。
一方、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)では、届出によって民泊営業が可能になりますが、営業日数が年間180日以内と制限されるため、計画的な運用が求められます。
どちらの方法でも、建物の構造や設備が基準に適合しているかが審査されます。3階建以上の建物の場合は特に慎重な対応が必要です。
用途地域や建築基準法、消防法との整合性も確認しましょう。
消防法による設備の基準を満たす必要がある
民泊施設には、消防法に基づいた設備の設置が義務付けられています。3階建以上の建物では、火災発生時のリスクが高くなるため、より厳格な基準が適用されます。
主な設備には、火災報知器、自動火災報知設備、避難誘導灯、消火器、場合によってはスプリンクラーの設置も必要となります。
また、避難経路の確保や防火戸の設置も必要になるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
消防署との事前協議を行い、基準に適合した設備の導入を進めましょう。
近隣住民への騒音トラブル対策が必要
民泊を運営する際に避けて通れないのが、近隣住民とのトラブルです。特に3階建以上の戸建では、窓やバルコニーの位置によっては、音が響きやすくなります。
宿泊者が深夜に騒いだり、バルコニーで喫煙やパーティーを行うなど、生活音や行動が周囲の迷惑になるケースもあります。
このため、騒音防止のためのハウスルールの整備、防音対策、監視カメラの設置など、具体的な対策を講じることが重要です。
地域住民との良好な関係を築くことが、安定した民泊運営の鍵となります。
非常用の避難経路を確保する必要がある
火災や地震などの災害が発生した際、安全に避難できる経路の確保が義務付けられています。これは3階建以上の建物においては特に重要なポイントです。
避難経路には、廊下や階段、避難はしごなどが含まれます。また、通路幅や扉の大きさ、出入口の位置などにも細かい基準があります。
これらはすべて建築基準法や消防法に基づき設計・確認されるべき項目であり、専門家による点検・監修が不可欠です。
避難訓練や案内表示も準備し、宿泊者の安全を最優先に考えましょう。
3階建以上の戸建民泊で竪穴区画を設置する法的な基準

竪穴区画の設置は、火災時の延焼を防ぐために不可欠な構造です。特に3階以上の階を持つ民泊では、その設置が法律で義務付けられています。
建築基準法により3階以上の階にある階段は竪穴区画が必要
建築基準法では、3階建以上の建物の階段は竪穴区画で囲う必要があると定められています。これにより、火災発生時に煙や炎が階段を通じて他の階に広がるのを防ぎます。
民泊においてもこのルールは適用され、階段を防火戸などで囲い、延焼を防ぐ構造にする必要があります。
また、階段の素材や仕上げにも耐火性が求められるため、設計段階での対応が不可欠です。
既存建物を民泊用途に変更する場合、後付けの対応が必要になる場合もあります。
竪穴区画は耐火構造や防火設備で囲う必要がある
竪穴区画として認められるには、耐火構造や防火設備でしっかり囲われている必要があります。たとえば、1時間耐火構造の壁、天井、防火扉などが基準となります。
これは、階段部分だけでなく、その周辺の空間すべてに適用されることがあります。構造材や内装材も防火性能を満たすものであることが求められます。
また、建物の規模や用途によって必要な耐火時間が変わるため、設計段階で十分な検討が必要です。
防火シャッターの設置や、自動閉鎖機能付きの防火扉の導入も検討しましょう。
階段室やエレベーターシャフトも竪穴区画の対象
階段だけでなく、エレベーターシャフトやダクトスペースも竪穴区画の対象になります。これらの空間も火災時に煙や火が通る経路となりやすいため、適切な区画処理が必要です。
とくにエレベーターを設置している建物では、シャフト内の防火構造の強化や、火災時に自動停止する機能の追加などが求められます。
また、ダクトや配管の貫通部にも防火処理を施す必要があるため、設計や施工に高度な専門知識が求められます。
全体的な建物の防火設計として、包括的に捉える必要があります。
特定行政庁の条例で追加基準が定められている場合がある
建築基準法や消防法のほかに、自治体ごとの条例で追加の基準が定められている場合があります。たとえば東京23区や大阪市など、大都市では独自の安全基準が存在することがあります。
これらは国の法令よりも厳しく設定されていることがあり、対応せずに民泊を運営するのは違法となる可能性もあります。
そのため、事前に所轄の建築主事や消防署に相談し、必要な基準をすべてクリアすることが重要です。
地域ごとのルールに合わせた柔軟な対応が、安全な民泊運営につながります。
民泊での竪穴区画の設置に必要な申請・確認の流れ

竪穴区画の設置を含む建築や用途変更には、いくつかの段階的な申請や確認作業が必要です。以下にその流れをまとめます。
建築士による事前の現地調査が必要
まず、一級または二級建築士による現地調査を行い、建物の現状が基準を満たしているかを確認します。既存の構造が法令に適合していない場合、補強工事が必要になることもあります。
とくに階段やエレベーターの構造、壁の素材、開口部の位置などを詳しく確認し、図面と照合する必要があります。
建築士は、消防設備の必要性や、避難経路の確保についてもアドバイスを提供してくれます。
専門家の意見を早めに取り入れることで、後のトラブルを防げます。
用途変更や建築確認申請が必要になることがある
戸建て住宅を民泊に転用する場合、建物の用途を「旅館業」などに変更する申請が必要になるケースがあります。これは建築基準法に基づく「用途変更」に該当します。
また、構造や設備を変更する場合は、「建築確認申請」が必要になることもあります。特に竪穴区画の設置は大規模な構造変更に該当することがあるため注意が必要です。
これらの申請には、建築士による設計図や計算書の提出が求められます。
必要な手続きを漏れなく行うことで、違法建築とされるリスクを避けましょう。
消防署との事前協議で避難経路や防火設備の確認が必要
消防関係の設備や避難経路については、消防署と事前に協議することが必要です。建物の図面をもとに、避難経路、防火扉、報知器の設置場所などを確認してもらいます。
必要に応じて、消防署から指導が入り、追加設備の設置や構造変更が求められることがあります。
協議の際には、建築士が同席することで、技術的な説明や調整もスムーズに進められます。
消防署との連携をしっかりと行うことが、安全な民泊運営の要です。
完了検査と消防検査をクリアする必要がある
すべての工事が終わったら、建築完了検査と消防検査を受ける必要があります。これらをクリアしないと、営業許可や届出の受理がされないことがあります。
建築完了検査では、設計図面通りに施工されているか、防火構造や竪穴区画が法令に適合しているかを確認されます。
消防検査では、消防設備の動作確認、避難経路の確認などが実施されます。
検査に合格して初めて、安全かつ合法的に民泊を開始できます。
まとめ|民泊で3階建以上の戸建を運営する際の竪穴区画設置のポイント

3階建以上の戸建で民泊を運営する際は、建築基準法や消防法、旅館業法など、複数の法令に対応する必要があります。その中でも、竪穴区画の設置は火災対策として極めて重要な要素です。
安全性を確保し、合法的な民泊運営を行うには、専門家との連携と適切な申請・検査を怠らないことが何より大切です。長期的な民泊ビジネスの成功のためにも、今回ご紹介したポイントをしっかり押さえましょう。
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