民泊事業を始めようと考えているオーナー様の中で、「用途地域って何?」「どの法律を選べばいいの?」という疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
用途地域は民泊運営の可否を決める重要な要素です。しかし、住宅宿泊事業法、特区民泊、旅館業法という3つの法律によって、運営可能な用途地域が大きく異なります。
今回は、民泊における用途地域について、それぞれの法律別に詳しく解説いたします。これから民泊事業を検討している方や、既に運営中で法律変更を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
用途地域とは、都市計画法に基づいて定められた土地利用の区分のことです。住環境の保護や商業活動の促進など、それぞれの地域の特性に応じて建築物の用途制限を設けています。
現在、日本には13種類の用途地域があります。
住居系用途地域(8種類)
商業系用途地域(2種類)
工業系用途地域(3種類)
用途地域によって、建築できる建物の種類や規模が決まるため、民泊運営においても重要な判断材料となります。
出典:国土交通省
https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-A29-v2_1.html
用途地域 | 住宅宿泊事業法 | 特区民泊 | 旅館業法 |
---|---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | ✓(条例注意) | ✓ | ✗ |
第二種低層住居専用地域 | ✓(条例注意) | ✓ | ✗ |
第一種中高層住居専用地域 | ✓ | ✓ | ✗ |
第二種中高層住居専用地域 | ✓ | ✓ | ✗ |
第一種住居地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
第二種住居地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
準住居地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
田園住居地域 | ✓ | ✓ | ✗ |
近隣商業地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
商業地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
準工業地域 | ✓ | ✓ | ✓ |
工業地域 | ✓ | ✗ | ✗ |
工業専用地域 | ✗ | ✗ | ✗ |
2018年6月に施行された住宅宿泊事業法は、年間180日以内という制限はありますが、比較的簡単な手続きで民泊運営を始められる法律です。
住宅宿泊事業法では、工業専用地域を除くすべての用途地域で運営が可能です。
住宅宿泊事業法の大きな特徴は、自治体が条例により独自の規制を設けることができる点です。
国の法律では運営可能でも、自治体の条例により制限される場合があるため、事前の確認が必要です。
自治体 | 規制内容 | 対象地域 |
---|---|---|
東京都新宿区 | 月曜日正午〜金曜日正午営業禁止 | 住居専用地域 |
京都市 | 1月16日〜3月15日営業禁止 | 住居専用地域 |
軽井沢町 | 営業完全禁止 | 住居専用地域 |
大阪市 | 金曜日正午〜月曜日正午のみ営業可 | 住居専用地域 |
鎌倉市 | 平日(月〜木)営業禁止 | 住居専用地域 |
特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づく民泊制度です。現在、東京都大田区、大阪府、新潟市など限定された地域で実施されています。
特区民泊では、住居系に加えて商業系の用途地域でも運営が可能です。
特区民泊には以下のような特徴があります。
最低宿泊日数:2泊3日以上(外国人旅行者等の滞在に限定)
営業日数制限:なし(通年営業可能)
対象地域:国家戦略特別区域に指定された自治体のみ
短期滞在には向いていませんが、中長期滞在の外国人観光客をターゲットにした民泊運営に適しています。
旅館業法は最も歴史のある宿泊業の法的枠組みです。2018年の法改正により、民泊事業者にとっても利用しやすくなりました。
旅館業法では、住居系の一部と商業系で運営が可能です。
民泊事業者の多くは、旅館業法上の「簡易宿所営業許可」を取得します。
旅館業法は最も厳格な基準ですが、その分信頼性が高く、ゲストに安心感を与えることができるでしょう。
項目 | 住宅宿泊事業法 | 特区民泊 | 旅館業法 |
---|---|---|---|
営業日数制限 | 年間180日以内 | 制限なし | 制限なし |
最低宿泊日数 | 制限なし(1泊〜) | 2泊3日以上 | 制限なし(1泊〜) |
手続きの種類 | 届出制 | 認定申請 | 許可制 |
初期費用 | 安い(数万円) | 中程度(10-20万円) | 高い(20-50万円) |
設備基準 | 緩い | 中程度 | 厳格 |
対象地域 | 全国(住居系のみ) | 特区指定地域のみ | 全国 |
ターゲット | 国内外問わず | 外国人観光客中心 | 国内外問わず |
民泊事業を始める前に、対象物件の用途地域を正確に把握することが重要です。
最も確実な方法は、物件所在地の自治体が公開している都市計画図を確認することです。
東京都:東京都都市整備局のホームページ
https://www2.wagmap.jp/tokyo_tokeizu/Portal
大阪市:大阪市都市計画情報提供システム
https://www.mapnavi.city.osaka.lg.jp
横浜市:横浜市行政地図情報提供システム
https://wwwm.city.yokohama.lg.jp/yokohama/Portal
多くの自治体では、インターネット上で都市計画図を公開しており、住所を入力するだけで用途地域を確認できます。
物件を仲介する不動産会社に問い合わせることで、用途地域を教えてもらえます。重要事項説明書にも用途地域の記載があるため、必ず確認しましょう。
法務局で取得できる登記簿謄本(全部事項証明書)には、建物の所在地とともに用途地域が記載されている場合があります。
実際に現地を訪れることで、周辺環境や用途地域の特性を把握できます。住宅街なのか商業地域なのか、実際の雰囲気を確認することは重要です。
住居専用地域は住環境の保護が重視されるため、近隣住民への配慮が特に重要です。
商業地域は比較的制約が少ないものの、競合施設が多い場合があります。
どの法律を選ぶかは、物件の用途地域だけでなく、運営方針によっても決まります。
「まずは小さく試して経験を積みたい」というオーナー様には住宅宿泊事業法が最良の入口です。
届出制なので初期投資は数万円レベルで済み、消防設備の追加も最小限で済みます。
営業日数が年間 180 日に限られるとはいえ、副業や空き家活用といったライトな運営スタイルなら十分に収益化が可能です。
とくに 住居専用地域にある戸建て・マンション を生かしたい場合、選択肢はほぼこの法律一択になるでしょう。
外国人観光客をメインターゲットに据え、2 泊 3 日以上の中長期滞在を狙うなら特区民泊がおすすめです。
通年営業が認められるため、ホテル同等の稼働率を目指せます。対象エリアは国家戦略特区内に限定されますが、裏を返せば競合が絞られたブルーオーシャンです。
大田区・大阪市・千葉市などインバウンド需要の根強い地域に物件をお持ちなら、この制度を活用しない手はありません。
「宿泊業を事業の柱にしたい」「ゲストへ絶対の安心感を提供したい」というオーナー様には旅館業法がおすすめです。
設備基準は最も厳しいものの、その分 ホテル品質の信頼性をアピールでき、商業地域で差別化を図る決定打になります。
清掃・フロント体制を整えられる中〜大規模物件なら、投資回収スピードも見込める上級者向けの選択肢です。
運営目的 | おすすめ法律 | 理由 |
---|---|---|
初期費用を抑えたい | 住宅宿泊事業法 | 届出制で手続きが簡単、費用も安い |
通年営業したい | 特区民泊 or 旅館業法 | 営業日数の制限がない |
短期滞在メイン | 住宅宿泊事業法 or 旅館業法 | 1泊から受け入れ可能 |
外国人観光客メイン | 特区民泊 | 外国人向けの制度設計 |
商業地域で営業 | 特区民泊 or 旅館業法 | 商業地域での営業が可能 |
信頼性重視 | 旅館業法 | 許可制で最も信頼性が高い |
用途地域で運営可能でも、マンション管理規約で民泊が禁止されている場合があります。特に分譲マンションでは事前の確認が必須です。
住居専用地域では、近隣住民への事前説明と理解を得ることが重要です。トラブルを避けるため、運営開始前に丁寧な説明を行いましょう。
自治体の条例は変更される可能性があります。運営開始後も定期的に最新情報を確認することが大切です。
民泊の用途地域について、3つの法律別に解説してまいりました。
住宅宿泊事業法は住居系用途地域のみで営業可能ですが、手続きが簡単で初心者向けです。特区民泊は対象地域が限定されるものの、商業地域での営業も可能で外国人観光客向けの中長期滞在に適しています。旅館業法は最も厳格な基準ですが、通年営業が可能で信頼性の高い運営ができます。
用途地域の確認は、自治体の都市計画図や不動産会社への問い合わせで行えます。ただし、用途地域で運営可能でも、自治体の条例やマンション管理規約で制限される場合があるため、総合的な検討が必要です。
これから民泊事業を始める方は、まず物件の用途地域を確認し、自分の運営方針に最も適した法的枠組みを選択してください。不明な点があれば、専門家や自治体の担当窓口に相談することをおすすめします。
株式会社Rebowlは、関東・大阪エリアで民泊・旅館・ホテルの運営代行を行っており、開業準備から集客、予約管理、インテリア提案、許認可申請、清掃手配、ゲスト対応、収支シミュレーションまで一貫サポートを提供しています。
空室リスクを抑えつつ収益最大化を図る提案を得意とし、多言語対応や、無人チェックインシステムの導入、24時間365日体制のサポートや迅速なトラブル対応など、ホスピタリティと現場力も高く評価されています。
さらに、マーケット分析を踏まえた収支シミュレーションや明確なイニシャルコスト算出、プロカメラマンによる写真撮影、オーナー向け管理画面の提供など、透明性と安心感を重視した体制が整っています。
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